【坊さんたちが一番話を聴きたい坊さんの話。『典座 TENZO』の話】

      2019/12/31

『サウダーヂ』も『バンコクナイツ』もむっちゃ良かった空族の最新作としてすごく楽しみにしてた。

典座 TENZO

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「サウダーヂ」「バンコクナイツ」を手がけた富田克也監督が道元禅師の遺した「典座教訓」を軸に、3・11後の現代日本における仏教の意義、そして信仰とは何かをドキュメンタリーとフィクションを交えて探求した仏教映画。10年前に本山での修行期間を終えた兄弟子の倉島隆行と弟弟子の河口智賢は、それぞれ自らの生まれた寺へと戻っていった。弟弟子の智賢は富士山の裾野に広がる山梨県都留市の耕雲院で住職である父、母と妻、そして重度の食物アレルギーを抱えている3歳の息子と暮らしている。全国曹洞宗青年会副会長としての顔も持つ智賢は、いのちの電話相談、精進料理教室、ヨガ坐禅など、さまざまな活動を意欲的に展開している。一方、兄弟子である隆行は福島県沿岸部にあったかつての寺、そして家族も檀家もすべてが津波によって流されてしまった。現在は1人で仮設住宅に住み、瓦礫撤去の作業員として働きながら、本堂の再建を諦めきれずにいたが……。 [From 典座 TENZO : 作品情報 - 映画.com]

実在のお坊さんが、その実名で、僧侶として暮らす実生活が描かれる。といえばそれはドキュメンタリーのような気がするんだけれど、スクリーンの中で劇映画を演じてる。なんとも不思議な手触りの映画だった。

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劇映画だから、物語として何か大きな出来事が起こるのかと思ってたら、特に大きなことは起きない。

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むしろ過去に起こった大きな出来事、3.11について、寺や檀家を流されて復興土木作業員として働く僧侶のままならない日常を描いてる。

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映画としてのクライマックスは、青山俊董という尼僧の説話になるんだけど、なるほどそのお話はよく染みる。

この映画はもともと、2018年11月に日本で開催されることになった「世界仏教徒会議」において、世界中から集った仏教徒に対して日本の曹洞宗を知ってもらうために上映できる短編映画を作りたいという、全国曹洞宗青年会からの依頼を富田監督が受けたことから立ち上がった企画。

富田監督はまず、「曹洞宗の坊さんが、いちばん尊敬して、話を聴きたい人物は誰か?」と問い、その答えとして青山俊董老師の名前が挙がった。それではということで青山俊董老師に話を聴きに行き、主人公となる智賢への説話を撮影した。その説話が良かった。だからその説話を映画のクライマックスとして、物語がそこに至るように逆算して脚本が作られたということらしい。

でもその説話の中で青山俊董老師は「日本の仏教をここまでダメにしたのは坊さんです。檀家制度と世襲制度、どっちも国の政策に迎合しただけですわな。檀家制度というのは元々、江戸幕府がキリシタン排撃のために坊さんを戸籍係にしただけで宗教は関係ないですよね。」となかなかに厳しいことをおっしゃってる。映画の観客にとっては「ふーん。」というような話に過ぎないど、世界仏教徒会議で流すにはけっこう攻めた内容だと思う。

なるほどその辺が空族なのかなと思った。

 - 【漂流級】, ネタバレなし